つくば股関節の部屋は、筑波大学整形外科股関節グループのホームページです

診療内容

筑波大学附属病院および関連施設で行っている股関節疾患に対する治療についてご紹介いたします。

・人工股関節手術の術前計画
・人工股関節手術の進入方法
・骨セメントを使用しない人工股関節手術
・骨セメントを使用した人工股関節手術
・ナビゲーションを用いた人工股関節手術
・骨切り手術
・大腿骨頭壊死、難治性骨折に対する再生医療
・リハビリテーション

人工股関節手術の術前計画

   より早期の術後回復を目指し、私たちも低侵襲手術を導入しています。筋肉などへの侵襲を可能な限り抑えて行いますが、そのため手術中の視野が狭くなり、正確な手術手技が困難になる難点もあります。手術は、より生理的な股関節機能を獲得することが目的であり、人工関節を正確に設置することは、術後の機能回復や、術後の脱臼を防ぐこと、長期耐用性を得るために必要なことです。
   股関節の状態によりますが、術前にCT画像を使用して術前計画を立てることや、術中にナビゲーションを使用することがあります。

   三次元モデルを使用した術前計画を行っています。術前に撮影されたCT画像を元に、専用ソフトを使用して、シミュレーションを行います。
   特に変形が高度の場合は、個々により変形の度合いが大きく異なり、より合った機種やサイズの選択、設置位置、脚長差(左右の下肢長差)の予測に役立ちます。これを元に術中には、どの部分の骨を切除すべきか、どのように人工関節を設置すべきかの微調整を行います。

   左図は二次元での評価であり、おおよその術後イメージがつきます。中央図は人工関節設置後の三次元モデルであり、脚長差が矯正されることがわかります。左図は骨盤側の人工関節(カップ)を設置したものですが、左上図は正面像で、左下図が左側面を示しています。ここでは紫色に染まった部分の骨を切除してカップ(赤色)を設置することを予定します。このように術者が三次元でイメージすることによって、より正確な術前計画が可能となります。

人工股関節手術の進入方法

   患者様にとっては、傷あとの大きさや場所は気になることの一つかもしれません。現在は、最小侵襲手術と呼ばれるできるだけ小さな切開創(皮切)で、筋肉などの組織を傷めないで行う手術が広く行われるようになりました。また、人工股関節の進入方法は様々なものがあり、前方、前側方(①)、側方、後側方(②)などに分けられます。それぞれに特徴がありますが、近年では前方や前側方の手術が行われることが多くなっています。当院ではこれまで8cmほどの皮切で後側方の手術が多く行われてきましたが、最近では症例によっては前側方の手術も行うようになりました。


 

骨セメントを使用しない人工股関節手術

   当初、人工股関節手術はセメントを使用した固定方法が主流でしたが、セメントを使用しないで骨に固定する方法(以下セメントレス法)が開発され、それ以降セメントレス法が徐々に主流となり、現在では全人工股関節手術の約8割がセメントを使用していません。そのため当院でも同様に、セメントレス法を用いる頻度が高くなっています。セメントレス人工関節の金属には表面加工やハイドロキシアパタイトコーティングなどが施されており、骨と強固に固定されるように作られています。患者様自身の骨のもろさなどにもよりますが、近年では良好な長期成績が得られています。


 

骨セメントを使用した人工股関節手術

   大腿骨の髄腔に金属のインプラント(ステム)を挿入し固定を行いますが、その際に骨セメントを使用する場合があります。骨セメントはアクリル樹脂の一つで、人工股関節の固定材料としては40年以上の歴史のある方法です。適切な手技を行えば非常に安定した長期成績が期待できます。当院も含め、全国的にはこれまで骨セメントを使用しない方法が主流でしたが、最近ではご高齢などの理由で骨のもろい患者様の大腿骨の固定には骨セメントを用いてステムを強固に固定しています。


 

ナビゲーションを用いた人工股関節手術

   理想的な設置位置が予定されても、実際の手術では、骨が筋肉などに覆われているために視野が限られてしまいます。そのような状況の中で、人工関節の設置は、全体像をある程度予測しながら行われます。
   カーナビは人工衛星からの電波を利用して、車の位置を知らせてくれます。ナビゲーション手術では、赤外線を用いて人工関節の位置を認識しています。人工関節などがつけられた手術器具には、赤外線を反射するボールが取り付けられます。システムから発せられた赤外線はこのボールに反射し、反射した赤外線をシステムが計測します。つまり、股関節に対してどのように人工関節が位置しているかが瞬時にモニター上に示され、術中にリアルタイムにその位置情報を知ることができます。

   骨盤の位置を定めるために、術中に骨盤にピンを1本設置します。ナビゲーションを使用することで余分にかかる時間は10分ほどです。
   この方法では、より正確な人工関節の設置が可能になるのですが、実際に手術を行なっているのはすべて熟練した整形外科医です。カーナビは目的地までの道順を示してくれますが、運転中には様々な予期せぬ事態が起こることもありますし、必ずしも示された道順通りに進むべきとは限りません。手術でも、最終判断は術者の技量であり、ナビゲーションは補助的な役目だと考えられます。

骨切り手術(寛骨臼回転骨切り術)

   ここでは変形性股関節症初期に多く選択される骨切り術について紹介します。
   股関節は骨盤と大腿骨で構成されていますが、日本人の変形性股関節症の多くが、その骨盤の作りが浅いことが原因です。骨切り術は比較的年齢の若い方で、股関節があまり傷んでいないときに考慮される治療法です。股関節の屋根にあたる部分(骨盤)をくりぬいて回転させることで、残っている関節軟骨が荷重部にくるように修正する手術です。
   骨切り術の場合、人工股関節全置換術に比べ入院やリハビリテーションに要する期間は長く要することが多いです。最近では技術や人工関節そのものが改良され、人工股関節全置換術の術後は速やかに歩行練習を始めることができますが、一方で骨切り術では術後数週の免荷期間が必要で、すぐには歩行練習ができません。
   人工股関節全置換術の耐用年数も近年では伸びてきており、1日でも早く歩きたい、働きたいという方には人工股関節全置換術も適していると思います。骨切り術も人工股関節全置換術も場合によっては将来もう一度手術を受けていただく可能性もあるので、患者さんにメリット・デメリットを理解いただき、患者さんのニーズに合わせ人工股関節全置換術または骨切り術の選択を行うことが大切です。


 

大腿骨頭壊死・難治性骨折に対する再生医療

   筑波大学附属病院整形外科では、骨壊死・難治性骨折の方を対象として、骨形成を促進させる新しい治療を臨床研究として行っております。
   こうしたご病気でお悩みの方で、詳しい情報をお知りになりたいご希望がございましたら、下記のリンクにお進み頂き、内容をご一読ください。
   ただし、お身体の状況やご病気の進み具合によっては、臨床研究の対象とならない場合がございます。詳細につきましては、予め通院されている医療機関より紹介状を作成頂いた上で、当院整形外科外来の受診をご予約頂き、ご相談頂けますようお願いいたします。


 

リンク

骨壊死・難治性骨折に対する自家骨髄血を用いた骨新生治療(臨床試験登録情報
 

リハビリテーション

   リハビリテーションチームは、手術前から関わります。術前は、疼痛の状況、可動域(関節がどのくらい動くか)、筋力、バランス能力(転びやすさ)に加えて生活状況の評価をします。術後早期から関わり、股関節をひねってはいけない、といった禁忌肢位(行ってはいけない姿勢)の指導や、車椅子の乗り降りの動作、歩行訓練などを行います。
   手術の前後の状態によっては、免荷といって手術を行った方の脚に体重をかけられない期間が生じることもあります。その際には、段階的荷重訓練といって、少しずつ体重をかけていく訓練を行います。
   医師、理学療法士、作業療法士、看護師と様々な職種の連携の下、患者さんを中心としたチーム体制でリハビリテーションを行っていきます。
   骨髄血移植術に関しては、茨城県立医療大学と連携してリハビリテーションを行っています。