筑波大学整形外科股関節グループで行っている研究テーマについて、その一端をご紹介いたします。
・熱弾性応力が像法を用いた模擬大腿骨表面応力分析
・大腿骨近位部骨折と脊椎椎体骨折予防を目標とした骨粗鬆症治療の費用対効果分析
・日本語版EuroQOL(EQ-5D)を用いた健康関連QOL調査
近年の人工股関節全置換術(以下THA)の耐用年数は、機種、手術手技の発展に伴い改善傾向です。これには、人工関節から大腿骨への荷重の伝わり方(応力分布)が大きく影響します。私たちは、より理想的な人工関節手術を目指し、熱弾性応力画像法という新しい手法を用いて、模擬大腿骨への応力分布の力学分析を行っています。
応力が伝わった固体に弾性変化が起こると、微小な温度変化が起こり、これを熱弾性効果と呼びます。温度変化と主応力和変化には比例関係があることから、この温度変化を計測することで、応力変化をとらえることができます。
左図は応力実験画像で、骨頭部に荷重を加えています。中央図は模擬大腿骨と、遠位部分をポッドに固定した人工関節設置後の模擬大腿骨です。右図は、荷重負荷時の表面温度変化を赤外線カメラで計測したもので、つまりは大腿骨表面の応力分布を示しています。
応力分布について、従来は歪みゲージを用いて計測されてきましたが、ゲージが設置されたその点のみの計測しかできない欠点があり、たくさんのゲージを設置する必要があります。本法ではあますことなく表面応力の計測が可能であり、全視野的な応力分析を行うことができます。近年発展している有限要素解析(FEM)などのシミュレーションでも全視野的分析が可能です。本法はこれらとの、相互補完的な力学実験と言えます。
これまでの研究では、種類が異なる人工関節を用いて、臨床成績との関連性を明らかとしました。また、人工関節の設置条件の違いによって、応力分布が異なることも詳細にしています。近年、低侵襲手術を目的とした人工関節の開発も行われておりますが、今後はそういった人工関節形状の違いが、応力分布にどのように影響するか研究中です。
超高齢社会の日本において、骨粗鬆症患者は増加し続けています。骨粗鬆症により生じる大腿骨近位部骨折や脊椎椎体骨折は入院や手術を要することが多く、その医療費は増加しています。また、大腿骨近位部骨折や脊椎椎体骨折により生活の質(QOL:Quality of Life)は低下し、ひいては死亡率の上昇にもつながるとされています。
日本において課題とされている骨粗鬆症治療を医療経済的に評価・分析していくことを研究の目的としています。
医療経済評価分析において、治療対象者の治療により変化するQOLを考慮した分析が必要とされています。QOLを評価する方法は様々ですが、医療経済評価研究ではEuroQOL(EQ-5D)と呼ばれる質問票により効用値を算出します。日本では日本語版EuroQOL(EQ-5D)と呼ばれる質問票があり使用されています。
骨粗鬆症性脆弱骨折を受傷し治療している患者様や、人工関節手術を行った患者様のQOLについて、日本語版EuroQOL(EQ-5D)を使用して評価分析を行うことを目的としています。
臨床研究
筑波大学附属病院整形外科では、標題の臨床研究を実施しております。
本研究に関する問い合わせ、または研究への参加を希望しない場合は、担当者までご連絡をお願いいたします。本研究の概要は以下のとおりです。
2016年6月1日から2018年3月31日までの期間、当院で、人工股関節全置換術、人工膝関節全置換術を受ける方
変形性関節症に対する人工関節手術は、患者様の疼痛を顕著に改善させ、生活の質(Quality of Life:QOL)を向上させる治療法です。特に人工股関節全置換術と、人工膝関節全置換術は本邦においても非常に多くの施設で実施されており、成績も大変良好であると報告されています。これらの手術はいずれも良好な成績を収めておりますが、手術により患者様のQOLの改善がどの程度得られたかを客観的に評価することが比較的困難とされます。
本研究の目的は、上記手術を受けた患者様の手術前と手術後のQOLの変化について、調査、解析することです。QOLの評価を行う際には、医療者側が直接質問する形で行うのは不適切であり、患者様自身に文書などによりアンケート形式で質問に答えていただく方法がよいとされています。アンケート形式の質問票を直接患者様にお渡しして回答を頂きそれを回収させていただきます。アンケート結果は個人が特定できない状態で処理し、その結果を分析させていただきます。
患者様のアンケートは入院時に2回(手術前の状態、手術後2週後の状態に関わるアンケート)、外来通院中に3回(手術後3か月、6か月、1年の状態に関わるアンケート)を行わせていただく予定です。1回のアンケートにかかる時間は約5分程度です。
回答は任意であり、答えたくない設問には回答しなくて構いません。また、アンケートの提出をもって、参加に同意したとみなさせて頂きます。
ご自身が研究の対象者に該当する可能性があり、研究への診療情報の調査を行ってほしくないなどのご意志や苦情等がございましたら、下記に「保有する個人情報の問い合わせ・苦情等の連絡先」が記載されておりますのでお問い合わせください。
筑波大学医学医療系整形外科 西野 衆文
当院における、人工股関節全置換術後患者、人工膝関節全置換術患者の手術前、手術後の健康状態に関するQOLの調査、解析
筑波大学附属病院のホームページにある「お知らせ」の中の「筑波大学附属病院における個人情報の取り扱いについて(PDF)」を参照。
筑波大学附属病院 整形外科 西野 衆文
〒305-8576 茨城県つくば市天久保 2-1-1
電話:029-853-3219,FAX:029-853-3162